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様々な犬の去勢・避妊

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当院では、特に猟犬、大型犬を対象に
Vasectomyによる去勢手術を実施しています

犬の精管(Vasectomyはこの精管を切除します)

Vasectomyに関すること

① Vasectomyとは
精管を切除する手術で、俗にいう、パイプカット。精巣は維持され、男性ホルモンは正常に分泌されます。

② Vasectomyの意義(通常去勢との比較)
・去勢で約2倍リスクが上がる前十字靭帯断裂の予防
・去勢による体重増加を予防できる可能性
・去勢による認知症発症と進行を遅らせる可能性

③ 受精はできるか
精巣は残りますが、精子は出ないので、交配しても受胎はしません。

④ Vasectomy手術の手順

精管と血管が入っている白い膜を切り、精管と血管を確認します。精管と血管を分離し、精管のみを引き出し切除します。通常の去勢手術と手術時間はほとんどかわりません。

⑤ Vasectomyの問題点(通常去勢との比較)
・マーキングが出る可能性
・オスをターゲットとした攻撃性が残る可能性
・会陰ヘルニアが発生する可能性
・良性の前立腺肥大が高齢期に発症する可能性

⑥ Vasectomyの時期
通常の去勢手術と違い、男性ホルモンは残るので時期はいつでも良いが、無益な交配による個体増加を考慮し、決定・実施すべきである。

⑦ Vasectomyで寿命が延びるか?
通常去勢手術では、寿命が延びるという報告と延びないという報告が混在しています。延びる場合は、最大限13.8%(当院HP参照)。Vacectomyの寿命に関する報告はありません。

⑧ ヒトに対する攻撃性は?
通常去勢手術でも、実は、ヒトに対する攻撃性が減るというエビデンスはありません。

⑨ リビドーは残るか?
男性ホルモンは残るので、おそらく維持されると思います。

⑩ 後から、去勢手術は可能か?
可能です。

獣医療における去勢・避妊の問題点

2021年現在、何をもってして去勢・避妊とするかの定義ですら、獣医学では決まっていません。そんな状況なので、一般に実施されている去勢・避妊手術のメリット・デメリットでさえ、まったく意識されず、それどころか無視されています(後述)。ちなみに、去勢避妊にあたる英語のwordでさえ、以下のように多岐にわたり、日本語訳も決定されていません。( )内の訳は、私の訳になります。

・desexing (去勢・避妊、もしくはどちらか)

・sterilization (断種)

・gonadectomy (生殖腺切除術)

・orchiectomy (精巣切除術)

・ovariectomy (卵巣切除術)

・oophorectomy (卵巣摘出術)

・ovariohysterectomy (卵巣子宮切除術)

・vasectomy (精管切除術)

・salpingectomy(卵管切除術)

・hysterectomy (子宮切除術)

・spaying (避妊)

・neutering (去勢もしくは中性化)

・castration (去勢)

去勢(精巣切除)のメリット

・ヒトに対する咬傷の予防

・精巣腫瘍の予防

・良性前立腺肥大の予防

・会陰ヘルニアの予防

・肛門周囲腺腫の予防

・マーキングの予防

・寿命を延長させる可能性がある

特に、停留精巣は癌化する可能性が高いので、早期に摘出すべきです。

去勢(精巣切除)のデメリット

・前十字靭帯断裂のリスクを上げる

・肥満のリスクを上げる

・ある種のガンのリスクを上げる可能性

・認知症発症リスクを上げる可能性

避妊(卵巣・子宮切除)のメリット

・寿命が延長する

・子宮蓄膿症を回避

・乳腺腫瘍の予防

・ヒトに対する咬傷の予防

未避妊8歳の犬の20%が、10歳までに子宮蓄膿症になるというデータがあります。 また、26万頭の症例研究では、未避妊の犬の13%が、10歳までに乳腺腫瘍になります。乳腺腫瘍の50%は、悪性度が高いです。

避妊(卵巣・子宮切除)のデメリット

・前十字靭帯断裂のリスクを上げる

・肥満のリスクを上げる

・尿失禁のリスクを上げる

・ある種のガンのリスクを上げる可能性

・認知症発症リスクを上げる可能性

特に雌では、手術は、ある種のガンのリスクを上げるが、寿命を延ばす有益な処置と考えられている(寿命の延長が、ガンの見かけ上の発生数を上げた可能性がある)

個体管理に対する去勢避妊

経験的研究では、シェルターにおいても、家庭においても、同手術が個体管理に効果的であるというエビデンスはない。

引用文献