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心臓病研究

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当院は、心臓病の治療に加え、
心臓病の臨床研究を、企業研究者等と共同で実施しています。

・ 獣医師・飼主・ブリーダー・研究者の皆様

研究のメインテーマは、ARVC(不整脈原性右室心筋症)やDCM(拡張型心筋症)などの心臓突然死、不整脈ですが、心臓病に関わることであれば、全て研究の範疇です。突然死の多いボクサー、ドーベルマン、グレートデンの症例を幅広く診察しています。

・ 共同研究者

現在、下記の研究者、専門家の指導のもと、臨床研究、各種調査を実施しています

  • 石川泰輔 DVM, PhD
    元国立循環器病研究センター 創薬オミックス解析センター ゲノム系解析室 室長
  • 岩永孝治 DVM, PhD
    東京動物心臓病センター

・ 検査項目

ホルター心電図計、簡易心電図計等は貸し出しもしています。

  • 遺伝子解析(DNA検査):中断中
  • 11誘導心電図検査
  • ホルター心電図解析(2channel)
  • LP計測(ホルター心電図3channel)
  • 心臓エコー(2Dトラッキング、3D、VFM)
  • 簡易心電図検査機の調査(自宅測定の検討)
  • 心臓組織RNA検査:中断中
  • 心臓病理検査
  • ARVC遺伝子:現在はサンプリングのみ
  • DCM遺伝子:現在はサンプリングのみ

・ 研究

  • ボクサー心筋症(ARVC)
  • ドーベルマンDCM
  • グレートデンDCM
  • 犬の不整脈
  • 猫のARVC
  • 猫の心筋症
  • 猫の失神
  • 家族性の心疾患と遺伝子解析〈中断中)
  • 簡易機器による自宅での心電図測定の検討

・ 論文

・ 学会発表

 

※以下に、現在注力しているボクサー心筋症(不整脈原性右室心筋症)とドーベルマン拡張型心筋症の概要を掲載しています。

ボクサー心筋症(不整脈原性右室心筋症、ARVC)

ボクサー心筋症(不整脈源性右室心筋症、ARVC)

現在、約80頭を解析しました。

① 古典的なBCM(ボクサー心筋症)の考え方

以前より、ボクサー犬では、失神や突然死などの特徴的な疾患形態をとる心筋症が発症することが知られていました。1983年にDr. Harpsterはそれをボクサー心筋症(Boxer cardiomyopathy、 BCM)と呼び、重症度に応じて、以下の3つのカテゴリーに分類した。

1  : 軽度の心室性不整脈。
2  : 重度の心室性不整脈で、運動不耐症や失神。
3  : 重度の心筋不全、心不全状態で、しばしば徐脈性心室性不整脈が認められる。

② 最近のBCMの考え方

2000年代に入り、Dr.Meursらは、臨床形態や病理組織学的観点から、BCMがヒトの不整脈原性右室心筋症(ARVC)に酷似していることを報告しました。ARVCは、1995年のWHO/ISFC合同委員会において、ヒトの心筋症分類に新たに加わったもので、右室の心筋細胞が、脂肪や線維脂肪に置換されることを特徴とする心筋症です。現在のところ、BCMは、ARVCであると考えられています。なおBCMとカルニチン不足との関連性が報告されたことがあります。ある系統のボクサー犬ではその可能性もありますが、ほとんどのボクサー犬では関係ありません。BCM(ARVC)は、次項目に示したように、ホルター心電図検査や胸部誘導心電図検査で評価します。なお不整脈源性右室心筋症との表記も散見されますが、日本循環器学会および日本獣医学会の用語集では、現在、不整脈原性右室心筋症と表記されています

③ ホルター心電図検査による診断基準

Dr. Meursが提唱したBCM(ARVC)の診断基準
正常(normal) 単発性VPCの発生が、24時間で0〜20
再検査(indeterminate) VPCの発生が、24時間で20〜100、6〜12ヵ月後に再検査。
疑い(suspicious) 単発性VPCの発生が、24時間で100〜300。繁殖を避け検査を繰り返す。
罹患を示唆する(likely affected) VPCの発生が、24時間で100〜300、連発性VPCや心室頻拍が認められる。あるいは、単発性VPCの発生が 24時間で300〜1000
罹患(affected) VPCの発生が、24時間で1000以上

➃ ホルター心電図検査によるBCM(ARVC)の検査(③を基準)

ホルター心電図検査によるBCM(ARVC)の不整脈
QR-2100
ホルター心電図検査によるBCM(ARVC)の不整脈
RAC-5203

ボクサーのホルター検査は、80症例近く実施していますが、8割近くは、飼い主さん自身による自宅での装着です。

⑤ 心電図検査(簡易、11誘導)

右室流出路起源のVPC

簡易心電図検査(iPhone ECG、ボクサーARVC)

簡易心電図検査(Duranta、ボクサーARVC)

簡易心電図検査(Duranta、ボクサーARVC)

11誘導心電計(FUKUDA ME、ボクサーARVC)

屋外心電図検査(Duranta、ボクサーARVC、飼主宅での測定も想定)

⑥ 心電図検査(胸部誘導、ε波)

ε(イプシロン)波
胸部誘導に、ε波を認めることがある。

⑦ モニター心電図の応用

モニター心電図
心電計がない場合は、手術時に用いるモニター心電計を用いて数分程度の計測で、ARVCの診断ができることもある。

⑧ 心臓エコー検査

右室機能検査

右室由来のVPCによる心室中隔の奇異性運動

⑨ 心音(聴診)


VPC
ARVC発症時のVPCの心音(PC用、スマホでは音割れします)。

⑩ 遺伝子検査

遺伝子検査
STRN遺伝子検査(2021年1月の時点で、ARVCとの関係が見られないので中断中)。DNA自体は採取しているので、ご協力ください。GWASのSNPから、WGSにも検査を広げていますが・・・・・。

⑪ MRI検査

MRI検査
MRI検査

MRI検査で、ARVCの主体となる右室の脂肪組織の局在を確認。

⑫ 病理検査

右室壁の心筋層の外膜から中層にかけて、心筋細胞の線維脂肪性置換が顕著にみられる。

ドーベルマンの拡張型心筋症

ドーベルマンの拡張型心筋症

ドーベルマンの拡張型心筋症(DCM)は、以下に示したような、不整脈(1日300発以上のVPCの発生)や、心臓エコー検査(EDVもしくはESVの増加)などで検査する。DCMによる心不全の症状が発生する前に、(潜在性、無症候性、オカルトの状態で)診断し、対処するのが必須。

① DCM検査の流れ

約1時間の検査です。血液検査(DNA採取、一般生化学、心臓マーカー、甲状腺機能検査)、11誘導心電図検査、心臓エコー検査を実施します。

② 遺伝子検査(TTN、PDK4)

ドーベルマンの拡張型心筋症
PDK4遺伝子欠損
ドーベルマンの拡張型心筋症
TTN遺伝子置換

TTN,PDK4遺伝子検査(2021年1月の時点で、DCMとの関係が見られないので中断中)。DNA自体は採取しているので、ご協力ください。

③ 心臓マーカー

NT-pro BNP、ANP、Troponin Iの測定。

➃ 甲状腺機能検査

T4、TSHの測定。ドーベルマンは甲状腺機能低下症が多く、DCMに併発するとリスクが高まる。

⑤ 心電図検査

(1)11誘導心電図検査

10分間の計測

ドーベルマンの拡張型心筋症
ドーベルマンDCMの不整脈
DCMでは、ボクサーARVCと同様、VPCが認められる。

(2)簡易心電図検査

簡易心電図検査
自宅で飼主が計測できる。下記⑧の項目も参照してください。

⑥ 心臓エコー検査

心臓エコー検査

disk simpson法による心エコー検査

●ドーベルマンDCMの診断基準(感度100%、特異度99%)
・LVEDV-Index > 95 ml/m2
または
・LVESV-Index > 55 ml/m2

・EPSS > 6.5 mm(補助的な指標)
・SI < 1.65(大型犬の球形度)

・AO PEP/ET > 0.4

2017年の欧州獣医心臓病学会のガイドラインを参照(当院で翻訳しています。必要な方は請求してください)

⑦ 研究中の心臓エコー検査

4Dのvolume解析
DCMに応用可能か検討中

VFMによる検査

⑧ 自宅での心電図検査

簡単に心電図を測れる機器を貸し出します。動画はボクサー犬ですが、同じ種類の不整脈(3:41)を調べます。

⑨ ホルター心電図検査

ドーベルマンの拡張型心筋症
装着法は、上記ボクサーや、下記デーンの動画を参考にしてください。ドーベルマンのDCMは、1日300発以上のVPCの発生で診断可能。院内心電図検査でVPCが多発する場合は必要ありませんが、現在、24時間ホルター心電図検査が最も有用なDCMの検査。当院では4台のホルター心電計を無料で貸し出しています。

⑩ 簡易装着型のホルター心電図検査

自宅での心電図を、離れた病院で、リアルタイムでモニターできます。事後の解析も可能です。

⑪ 心音(聴診)

VPC
オカルトDCM、DCM発症時のVPCの心音。これはデーンのものですが、ドーベルでも同様です(PC用、スマホでは音割れします)。

⑫ 若齢発症型DCM

ドーベルマンでは、若齢発症型DCMが報告されています。報告では、生後10日齢から4週齢の幼犬でも、DCMの発症が確認されています。当院でも、3ヶ月齢でのオカルトDCMを診察したことがあります。若齢発症型DCMは、ポーチュギーズ・ウォーター・ドッグでも有名です。

⑬ドーベルマン関係の論文の翻訳

ドーベルマン関係の論文・論文翻訳を配布しています。ご興味のある方は、メールをください。

① ドーベルマン拡張型心筋症評価ガイドライン(ヨーロッパ、2017年)
② 銅関連性肝炎の総説
③ 甲状腺機能低下症と拡張型心筋症
④ フォンビルブラント病の治療法
⑤ 犬の心筋症に関する最新情報(2018年、2021年)

⑮ 病理検査

ドーベルマンの拡張型心筋症は、fibrofatty infiltrationタイプ。左室壁の心筋層の外層から中層にかけて、心筋細胞の線維脂肪性置換が顕著にみられる。

グレートデンの拡張型心筋症

ドーベルマンの拡張型心筋症

① 心臓エコー検査

② 心電図検査

グレートデンDCMでは、約半数の症例にドーベルマンDCMと同様にVPCが発生すると言われている。またAFもデーンDCMには発生が見られることがある。

③ ホルター心電図検査

グレートデンのDCMは、ドーベルマンのDCMと同様に、発症を心電図検査と心エコー検査にて診断することは可能です。しかし、ドーベルマンのDCMと違い、発症前の状態(preclinical phase)を、正確に判断する方法は、未だ報告されていません。

ホルター心電図検査

AFとVPC

④ 心音(聴診)


VPC
DCM発症時のVPCの心音(PC用、スマホでは音割れします)。

⑥ 病理検査

ホルター心電図検査

グレート・デーンの拡張型心筋症は、Attenuated wavy fiberタイプに加え、ドーベルマンで見られるfibrofatty infiltrationタイプが併発することがある。写真は、Attenuated wavy fiberタイプ。

検体のお願い

心臓(ドーベルマン、ボクサー、グレートデン)、肝臓(ドーベルマン)の検体をお願いしています。死後に当院に連絡後、当院へご遺体を運ぶか、主治医で解剖後、当院へご相談ください。また、先天性心疾患(心奇形)の心臓の検体もお願いしています。死後、生前の心臓病の確定診断をしたい場合は、ご連絡下さい。

他犬種のついて

ブルドッグ、ドーベルマンや猫 等でも研究
ホルター心電図計の装着

上記の研究を、突然死、不整脈の多いブルドッグでも行っています。また失神を繰り返す犬猫の症例も研究対象なので、遠慮なくお問い合わせください。研究対象の場合は、初診料以外、無料で検査可能です。