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手術実績

         

当院は、獣医師2人、助手2人で診察を行っている小さな病院です。通常診察の他、入院治療、研究、ドック健診をこなす為、一日の麻酔症例は1症例(緊急は除く)と決めています。麻酔症例には、全身麻酔症例(下記の表参照)と、局所麻酔症例(年間50~80症例)があります。

去勢避妊、軟部外科(胆嚢摘出、膀胱・尿道結石摘出術、会陰ヘルニア、胃内異物摘出、消化管切開、尿路ぞうそう術等)、整形外科、腫瘍外科(腫瘍切除、断脚、脾臓摘出術等)手術を行っています。

獣医領域では、手術以外にも、外傷・歯科処置、特殊処置・検査(膀胱洗浄、内視鏡検査等)でも全身麻酔をかけます。年間の麻酔症例数は、下記表の手術数の約1.5倍になります。

麻酔科の取り組み

全身麻酔症例数(外傷、骨折は除く)

年度 イヌ・ネコ ハムスター ウサギ フェレット その他
2022年 125 115 2 8 0 0
2021年 139 134 0 5 0 0
2020年以降、新患の受け付けはしていません
2020年 153 139 1 10 3 0
2019年 148 140 1 6 1 0
2018年 107 101 1 3 2 0
2017年 120 112 1 3 4 0
2016年 132 128 0 4 0 0
2015年 136 132 0 4 0 0
2014年 129 125 2 2 0 0
2013年 129 125 1 2 1 0
2012年 140 132 3 4 1 0
2011年 148 144 0 2 2 0
2010年 167 155 1 4 0 7
2009年 120 115 1 2 2 0
2008年 112 106 2 3 1 0
2007年 125 115 4 3 2 1
2006年 136 116 9 5 4 2

※2010年は手術数が増えすぎたため、一時、去勢・避妊手術の受け入れをストップしていました。
※2013年8月~10月まで、副院長体調不良のため、手術は一時、中断してました。
※2008年12月~2009年3月まで、院長出産のため、手術は中断してました。

手術・麻酔リスクのエビデンス

手術・麻酔のリスク

手術・麻酔リスクは、犬 0.05-1.33 %、猫 0.11-1.4 %、ウサギ 0.73-7.37 %と報告されています。

手術のリスクと考えられるもの

  • 手技のミス
  • 機械の誤動作
  • 悪性高熱
  • 薬剤のアレルギー
  • 止血異常
  • 心筋症(ボクサー、ドーベルマン、猫)
  • 3歳以上の短頭種
  • 悪い状態での手術(内臓破裂、胃捻転)
  • 検査ができない動物(小動物 等)
  • 高齢(術後腎不全になるケースがある)
  • 脳内の異常(CT検査が必要だが、CT検査にも麻酔が必要)

麻酔器・人工呼吸器

再呼吸式
再呼吸式
非再呼吸式(小動物、小型犬猫用)
非再呼吸式(小動物、小型犬猫用)
麻酔器・人工呼吸器
麻酔器・人工呼吸器

特に短頭種の手術は、換気量が低下するので人工呼吸器は必須です。当院では、動物の体重によって、再呼吸式と、非再呼吸式(3kg以下の動物)の2つの回路と、3つの人工呼吸器を使いわけます。 人工呼吸は、従圧式(PCV、PC-SIMV、PEEP)、従量式(VCV、VC-SIMV、PEEP)の両方式を採用。マウスから、80kg程度の動物までは、麻酔可能です(それ以上の体重は経験がありません・・・・多分可能?)

肺への障害が低いガスの使用

当院では、肺への障害を低くするため、100%酸素ではなく、混合エアを使用しています。

手術機器

手術機器
高周波電気メスVIO3
手術機器
シーリングシステムLigaSure

当院は、避妊、去勢手術も、大学病院で使用するような外科機器で行うというのがモットーです。血管シーリングシステムを導入しており、糸による血管の縫合をできる限りさけ、お腹の中に、糸を残さない手術を実践しています。

術前血液検査

術前血液検査
血球計算機
術前血液検査
血液生化学
術前血液検査
ホルモンチェック(高齢期)

当院では、術前に複数項目の血液検査を実施します。

術前血液凝固能検査

術前血液凝固能検査
血液凝固能検査

止血の検査。当院では、猫の去勢手術を除き全ての手術に導入しています。人間ではこの他に、血小板凝集能検査が行われますが、獣医の臨床現場ではいまだ実施できません。

術前心機能検査

術前心機能検査
3D/4D超音波診断装置
(LISENDO880LE)
術前心機能検査
3D/4D超音波診断装置
(VividE95)
術前心機能検査
11誘導心電計
術前心機能検査
デジタルレントゲン

心エコー(超音波)検査で、心臓の機能の確認

心電図検査。ドーベルマン、ボクサーでは重要。

獣医療で最も遅れている分野です。難易度の高い手術も、心臓の機能が保たれていることが前提です。特にドーベルマンやボクサーは、元気に見えても、隠れた心筋症をもっています。麻酔でのトラブルを避けるために、心臓の検査はとても重要です。

麻酔中の管理

麻酔中の管理
麻酔中の管理

PV-Loop (PEEP 2hPa)

  • 心電図
  • 血圧
  • CO2(カプノ):main/sideの2系統で管理
  • O2(酸素)
  • 麻酔濃度
  • 体温
  • 換気量
  • 供給O2分圧
  • PV-Loop
  • 除細動器の設置

当院は、複数項目で麻酔を管理しています。

手術時間管理

手術時間管理

当院では、麻酔の開始から終了までの時間をチェックし、管理しています。上記の表は、2020.06.20時点で、過去10例の猫の避妊手術のデータ。麻酔停止から、意識が完全に戻るまでの経過時間です

手術の録画

手術の録画
手術の録画

術後の入院舎でのモニター・録画

手術中と、術後の入院舎をモニター・録画しています。特別な手術以外、録画は約1週間保存の後、消去します。手術の説明の為というよりは、トラブルが発生した際の、飼主さんへの情報提供の為の録画です。

血液の保存

手術前検査用サンプルを、術後数日間保管します。基本的な血液検査は術前に実施していますが、術後に急変した場合、特殊な検査項目を追加測定し、この術前保管サンプルと比較します。

短頭種の麻酔

短頭種の麻酔

短頭種は、麻酔のリスクが高いと言われていますが、下記の点に注意することにより最小のリスクにすることができます。

  1. 問診(スターター、ストライダー)
  2. 外鼻孔の検査(4段階)
  3. 年齢(3カ月~3歳以下が低リスク)
  4. レントゲンによる軟口蓋の検査
  5. レントゲンによる気管低形成の検査
  6. 麻酔時の人工呼吸(必須)
  7. ブルドッグの不整脈
  8. ブルドッグの睡眠時無呼吸症

大型犬の麻酔

大型犬の麻酔

ドーベルマンやボクサーなど、元気そうに見えても潜在型の(症状の現れない)心筋症の罹患率が高い犬種の麻酔は、心臓の検査(心電図、心エコー)は必須。

当院の低侵襲手術

低侵襲去勢避妊手術
低侵襲去勢避妊手術

低侵襲とは、動物の体にできる限り負担をかけないことです。手術においては、できる限り小さい術創(傷)で行うことを、低侵襲手術と言います。当院の猫の避妊手術は、卵巣・子宮摘出術ですが、術創は1cm程度の低侵襲手術を実施しています。いわゆるミニラパロ手術です。一部で流行りの腹腔鏡手術は、ラパロ手術と言って、3~4箇所の穴を開けますが、ミニラパロは1箇所の極小手術です。また糸を使用しない血管縫合システム、レーザーメスを使用することにより、犬・猫・ウサギの去勢避妊手術一般で、短時間で、痛みの少ない低侵襲手術を実施しています。

当院の手術の特徴

① 麻酔と外科に獣医師を配置
手術は、必ず2人以上の獣医師で実施します。

② 血液凝固能検査の実施
通常の血液検査に加え、猫去勢手術以外の全ての手術に血液凝固能検査を実施しています。

③ 糸を極力使わない手術の実施
M・ダックスなどで問題になっている縫合糸誘発性の腫瘍を避けるため、血管シーリングシステムを使用し、極力、縫合糸を使わない手術を実施しています。

④ 3系統の麻酔回路・人工呼吸器
麻酔回路が1系統という病院は、非常に危険です。3kg以下の小型動物は回路内の抵抗が大きいと、非常に負担がかかります。当院では、非再吸収(3kg以下の子)と、再吸収回路(中型以上の動物)の2系統、2つの人工呼吸回路(従量、従圧)を設置しています。

⑤ 心電図計を常備(不整脈の対応)
特殊な犬種では必須の検査です。

⑥ 心エコー検査(ドーベルマン、ある種の猫)
心筋症が疑われる場合、手術前に、心エコー検査を実施しないなんてありえません。獣医療の場合は、手術単価を下げるため去勢・避妊手術での心エコー検査はほぼ実施されていません。当院でも、若齢の去勢・避妊手術では通常行いませんが、いつでも検査が実施できる体制にはあります。

⑦ 手術関連機器のバックアップ体制
麻酔器、人工呼吸器は、急な停電にも対応できるものを使用しています。急な故障に備え、心電図モニターは4台、血圧計は2台を準備しています。

⑧ 術中の致死性不整脈への対応
除細動機(カウンターショック)を常備し、致死性不整脈への対応に備えています。

⑨ 肺の状態の管理
麻酔濃度、酸素濃度、血圧、心電図に加え、当院では、肺の状態をPV-Loopで管理しています。

⑩ 100%酸素による肺の障害の軽減
100%酸素は、肺に障害を与えます。当院では、肺に障害を与えないように、酸素分圧をコントロールします。

二次医療

当院は、様々な診療科の各種検査、各種治療、各種手術を院内で行っている病院ですが、より高度な検査や手術が必要な場合は、飼主様と相談の上、二次病院(高度医療設備を有する病院)を紹介しています。信頼できる二次病院を選び飼主様に紹介するのも、ホームドクターの重要な仕事のひとつだと考えています。当院では、検査の先進性、治療技術、学際的な知名度の観点から、二次病院を常に選別しています。特に、腫瘍内科・外科、歯科、皮膚科、循環器科の専門医に関しては、直ちに紹介可能です。

二次病院紹介実績

年度 CT/MRI 外科 歯科 眼科 皮膚科 循環器
2022年 5 1 0 0 7 4
2021年 25 10 0 0 4 4
2020年 6 3 0 1 5 4
2019年 6 3 0 1 4 4
2018年 4 2 0 0
2017年 2 1 0 0
2016年 6 0 0 0
2015年 6 1 2 0
2014年 12 1 0 0
2013年 14 4 0 2
2012年 18 9 0 1
2011年 13 2 0 3
2010年 16 3 3 2

CT/MRI : 君津市の2次病院

外科 : 君津市、川崎市の2次動物病院

眼科 : 横須賀市、幕張市、津田沼市の動物病院

皮膚科 : 当院での専門医との遠隔診療

循環器 : 当院での認定医との遠隔診療

紹介している病院、検査機関